「税理士は独立しても食えない職業」と言われる理由とは?

最終更新日 2023年10月18日

「税理士は独立しても食えない職業」と言われる理由とは?

税理士を目指す人のなかには、「いずれは独立して事務所を構えよう」と考えている方が多いのではないでしょうか。税理士試験は合格率が18%ほど(2023年現在)と、難易度が高い国家試験なので、その専門的な知識やスキルを活かすためにも独立したいと考えるのは自然なことでしょう。

専門職として安定した職業に思える税理士ですが、一方で「税理士は開業しても食えない」とも言われます。

今回はそう言われる理由と、開業した税理士の実状、開業して成功するためにすべき施策をお伝えしていきます。

税理士は独立しても食えないといわれる理由5選

税理士は独立しても食えないと言われる理由5選

独立した税理士が食えない職業と言われるのには、本人の準備やスキル不足、社会的な変化によるものなどいくつかの理由がありますが、主に考えられるのは以下の5つです。

1.税理士の全体数が増加

この10年ほどで税理士の登録者数が増えているにもかかわらず、中小企業数は減少しています。そのため、開業したばかりの税理士が顧客を獲得するのは、大変難しい状況になっているのです。さらに開業税理士には定年がないため80歳以上の税理士は全体の10%以上にもなります。ベテランの税理士から仕事が回ってくるということも少ないでしょう。

開業税理士の平均年齢
年代パーセント
20代の税理士0.6%
30代の税理士10.3%
40代の税理士17.1%
50代の税理士17.8%
60代の税理士30.1%
70代の税理士13.3%
80代の税理士10.4%

引用:日本税理士会連合会(平成26年1月1日現在 32,747人対象)

 

2.会計ソフトなどテクノロジーの進化で税務が減る

テクノロジーの進化により、クラウド会計など多くのシステムが提供されるようになってきました。これまで税理士が行っていた税務の一部を、専門知識のない人が行えるようになってきたのです。さらに、記帳や月次監査、申告書の集計作業などの自動化も始まっています。これまで経理作業などを主な業務にしてきた税理士は、仕事が減る、なくなると言われています。

3.価格競争の加速化

実務や営業のスキルがないと、つい低価格に走ってしまいがちですが、徹底した業務の効率化によってコスト削減を図っている大手の税理士事務所などと価格で競っても、勝てる見込みは薄いです。商品やサービスの差別化を考え、自分の強みを活かせるような経営方法を考えられる税理士でないと、価格競争の激化した税理士業界で食っていくのは難しいでしょう。

4.営業スキルやノウハウのないまま開業

所属税理士や社員税理士として企業に属していた頃は、会社から支持された案件をこなせばよいため、営業力を求められることは少なかったでしょう。しかし、開業後には営業スキルが必須です。顧客とコミュニケーションを取り、相手が求めるモノを見抜き、.課題を発見して提案していくなどの知識がないと、顧問契約を取ることはできません。

5.人脈不足で、相談相手や紹介してくれる相手がいない

開業したばかりの税理士には人脈が広くないので、メインとなる受注方法の一つが欠如することになります。紹介を受けるためには自分の仕事を回してくれるような先輩や、別の士業の仲間などの人脈がとても大事になります。紹介だけでなく、業務上の悩みを相談したり、税務の手伝いに他の事務所に行かせてもらったりなど、さまざまな面でも人脈は必須です。

アックスコンサルティングは士業専門に事務所経営をサポートし続け35年以上。培ってきた技術と実績は圧倒的です。開業税理士を成功に導くノウハウの公開、人脈を広げるための士業交流会の実施、顧客のニーズを理解するためのセミナーなど、多岐にわたるサポートが可能です。お気軽にお問い合わせください。

開業税理士の廃業率と年収

開業税理士の廃業率は6%前後と言われています。
言い換えれば94%は廃業せずに税理士としての仕事で食っていけているとも言えます。

開業税理士の31.4%は年収300万円以下とのデータがあります。廃業していなくとも、300万円以下の年収では食っていくのが辛いという意味で、税理士は食えないと言われることもあるでしょう。

特に若手で開業したての税理士は人脈やマーケットの知識が乏しく、1年目から安定した受注が難しいです。
長く続けていれば人脈も広がり、自分に適したマーケットを把握して仕事を増やしていくことができますが、最初のうちはコンサルタントに依頼しない限りは難しいでしょう。

60歳以上の税理士が50%以上も居ます。
非常に多くの税理士がいる現代では、隣の税理士事務所と顧客を取り合っている状態です。そんな中でマーケティングの知識や経験、実績や信頼が乏しい若手税理士が多くの仕事を獲得することは非常に難しいのです。開業税理士にとって年収300万の壁は厚いのが現状です。

税理士の年齢については下記の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

食えない職業と言われてしまう税理士。実際は?

食えない職業と言われてしまう税理士。実際は?

専門性の高さから、以前は「合格すれば将来は安心」と考えられていた税理士。最近では、将来を不安視する声も多く聞かれるようです。実際はどうなのでしょうか?

税理士はスキルや経験が重要視される仕事のため、年代が上がるたびに年収も上がるのが一般的です。かつては独立して開業すれば、最低でも1000万円以上の年収と言われ、3,000〜5,000万円、1億円越えも不可能ではないと言われていました。

税理士の平均年収は958万円
年収500万以下は48.1%
年収2000万以上は5%

しかし、現在開業をされている税理士の平均厚生労働省の発表によると、税理士の平均年収は約958万円(※1)となっており、日本税理士会連合会のデータ(※2)によると、年収500万円以下の税理士が全体の48.1%、年収2,000万円以上は5%前後となっています。開業税理士として独立したものの、考えていたように売り上げを上げられる税理士はごく一部というのが、実際の状況です。

開業税理士のほぼ半数が年収500万円以下で、所属税理士や社員税理士と年収が変わらないにもかかわらず、経営の不安やストレスに負担を感じる。そうなってしまうと積極的に事業を推し進める気力が削がれて廃業へ向かってしまうことも。

※1厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」

※2第6回税理士実態調査報告書

開業してもすぐには儲からない

開業すれば必ず収入が上がるということではありません。現在税理士として登録しているのはおよそ8万人。中小企業が減っている現代では顧問契約は争奪戦となっており、開業したばかりの若手税理士が顧客を得るのは難しくなっているのです。

開業して間もないと人脈がなく安定した受注ができない、顧問契約などの安定した収入源がない、これらが半年や1年という短い期間で廃業してしまう原因でしょう。税理士が開業しただけでは仕事が降ってくるわけではないのです。マーケティングを行ったり、人脈形成のために交流会に参加したり、税理士向けのセミナーに参加したりと、積極的に活動することが重要です。

所属税理士や社員税理士は?

所属税理士や社員税理士など、組織に属している税理士の年収は、500〜600万円程度と言われ、事務所規模にもよりますが、なかには300万円台という場合もあります。もちろん、大手の税理士法人などで1,000万円以上の年収を得ている人もいます。

開業して「食える税理士」になるために対策すべきこと

開業して「食える税理士」になるための対策

開業しても事務所が軌道に乗るためにはある程度の時間がかかります。そのため、営業が上手くいかず運営資金が限界となり、1年もたずに廃業してしまう人もいるのです。そうした事態にならないためにも、開業前から以下のようにある程度の対策を考えておくとよいでしょう。

●余裕のある資金

開業後の1年間くらいは、顧問契約などの受注がなくても耐えられる資金を準備しておきましょう。顧客を獲得するまでは焦ってしまうものですが、運営資金に少しでも余裕があれば、不安になりすぎずに営業に専念できるはずです。開業してから軌道に乗るまでの不安定な期間は、誰もが通る道です。そこで諦めてしまうことのないよう、耐えるための運転資金が必要です。

税理士事務所(1人)の運転資金目安は月間35万円

賃貸費用20万、設備維持1万、消耗品1万、システム利用料1万、通信費1万、電気水道ガス1万、広告宣伝費5万、営業接待費3万、その他2万。合計35万円です。賃貸費用や広告宣伝費などで大きく左右される部分も多いですので、事務所の立地、スタッフの人数、営業方法、その規模によって調整が必要です。

一般的な事務所運営では、最低でも6か月間の運転資金を準備することになります。その場合、35万*6か月=210万円の運転資金を目安に準備すると良いでしょう。逆にこれに満たない2ヶ月分の運転資金しか用意できなかったと想定すると、思ったように収入が伸びなかった次の月で資金が枯渇しています。その場合、営業方法やマーケティングの調整をする間もなく資金が底をついてしまいます。

開業資金とは別に、余裕のある資金(6ヶ月分の運転資金=210万円)を準備すると良いでしょう。

また、運転資金は一時的なものではなく、永続的に保有しておくべき保険となる資金です。開業時だけではなく、経営が順調に行えている状態でも運転資金を見直して保有するように心がけましょう。

●顧問契約の獲得

開業後の事務所の収入源としては、顧問契約が一番でしょう。定期的な顧問料を得られるため、事務所の資金繰りも安定します。顧問先を少しずつ増やすことができれば、収入だけでなく人脈も広がっていき、新たな受注につながっていきます。後日トラブルなどにならないよう、顧問先の売り上げなどからある程度顧問料を設定しておきましょう。

●営業力・コミュニケーション力のアップ

新たな顧客を継続的に得るためには、営業力・コミュニケーション力が欠かせません。特に税理士は、税務処理だけでなく顧客からさまざまな相談をされ、信頼感を築いていくものです。クライアントとの信頼関係が良好だと、そこから新たな依頼や紹介なども受けられるでしょう。さらに、コミュニケーションスキルを活かして人脈を広げていけば、他士業からの紹介や、セミナーや講演会など税務以外の仕事の依頼にもつながります。

●他事務所のとの差別化

多くの税理士事務所のなかから選ばれるためには、一般的に税理士が行う税務申告や記帳代理業務だけではなく、専門性や他にはないサービスなど、クライアントが惹かれる独自のものを築きましょう。「固定資産税に特化している」「相続に悩んだらおまかせください」「コンサルティングも同時に行えます」など、自分の得意分野を作り、広めていくことで、選ばれる税理士を目指していきます。

開業税理士の今後はどうなるのか

開業税理士の今後はどうなるのか

安定した職業と言われてきた税理士ですが、テクノロジーの進化などに伴って、「今、税理士が行っている業務はAIに代替されるのではないか」と危惧されています。さらに近年の中小企業数の減少などの不安要素で、今後を心配されている方も多いのではないでしょうか。

税理士業界の現状や今後税理士に求められるものを理解し、将来性についてお伝えしていきましょう。

税理士の将来的な不安要素とは

1. 会計ソフトやクラウドサービスの普及

これまで税理士事務所が行ってきたデータ入力や税務申告代行などの業務は、クラウド会計などに代替されていくようになるでしょう。近年では高機能で低価格のものが増え、導入もしやすい傾向にあります。学習機能を持つAI(人工知能)や業務の自動化を可能にするRPA(Robotic Process Automation)により、今後もさらに普及が広がると考えられます。これによって業務効率は飛躍的に上がりますが、税務の理解がないと扱えません。また、税理士の資格が必要な業務でAIに任せられないもの(複雑な税務書類の作成、税務相談)については、今後も需要は続きそうです。

2. 中小企業数の減少

税理士は増加とは逆に、中小企業が減少しています。中小企業庁の資料によると、日本の中小企業の数は1999年以降、長期的に渡り減少傾向にあります。その理由は経営悪化による倒産だけではなく、経営者の高齢化と後継者不足も大きな問題となっているのです。中小企業の減少は、税理士事務所の顧客争奪戦を招き、価格競争を招く要因となると危惧されています。よりマーケティングに精通して顧客にアピールできる事務所が生き残れるようになります。

参考:中小企業庁/中小企業白書

3. 税理士の高齢化

税理士業界では今、高齢化が問題視されています。60歳以上が過半数となっており、若手である20~30代の割合は1割以下と言われているのです。その理由は、開業税理士には定年がないこと、国税や税務署を定年後に税理士になる人たちがいること、さらに、税理士試験の受験者の平均年齢が上がっていることなどがあります。

高齢の税理士は若年の税理士と比較して、AIを利用した効率化やマーケティング、クラウドやWEBの利用に疎い傾向があります。ファックスや折込チラシの時代からITへ移行しつつあります。30歳の税理士と80歳の税理士では、使用する端末が異なったり、ITの利用頻度そのものが異なります。これからは、ITに強い税理士が有利になると予想できます。

税理士に求められるものが変わってきた

将来的な不安要素に加え、クライアントが税理士に求めるものも変化してきています。これまで一般的に行われてきた税務の需要は減っていくでしょうが、その代わりに付加価値の高い業務が求められるようになるのです。

税理相談と併せて「MASコンサルティング」「事業再生コンサルティング」「事業承継コンサルティング」「経理コンサルティング」などの経営コンサルティングを行えると、クライアントにとってのメリットも多く、頼られる存在になるでしょう。また、少子高齢化が社会問題となっている日本では、相続や事業承継などの問題が拡大しています。そのため、国内外の不動産やデジタル資産なども含めた幅広い対応が可能な相続専門税理士や、M&Aや事業承継税制に造詣の深い税理士が必要とされているのです。

アックスコンサルティングでは、士業専門35年。培ってきた技術と実績は圧倒的です。開業税理士を成功に導くノウハウの公開、人脈を広げるための士業交流会の実施、顧客のニーズを理解するためのセミナーなど、多岐にわたるサポートが可能です。お気軽にお問い合わせください。

まとめ

税理士として独立したいという夢を持ちつつも、「税理士は独立しても食えないと言われているけど、どうなんだろう…」と不安を抱えている方は多いと思います。確かに、開業税理士として成功するには人脈や営業能力、他事務所とは違うアプローチが必要です。独自性のない一般的な税務をこなすだけでは、苦しい状況です。

今は変化の激しい時代です。さらに今後も長く税理士として活躍を続けるためには、クライアントが税理士に求めるモノをいち早く捉え、柔軟に対応できなくてはなりません。マーケットを客観的かつ正確に把握して、自身に合う専門性を身に付けて、求められる税理士を目指していきましょう。


【監修】株式会社アックスコンサルティング

株式会社アックスコンサルティングは1988年の創業以来一貫して、士業事務所とその顧問先である企業、資産家の、ビジネスの成功をコンサルティングでサポートしてまいりました。
士業専門で35年以上、累計支援実績は15,000件以上と、日本でもトップクラスの顧客獲得の知識と技術で開業支援サービスを提供します。
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