最終更新日 2023年10月18日
開業税理士として独立した後は、一社でも多くの案件を得て事務所を軌道に乗せ、安定させていかなくてはなりません。そのためには集客に注力していく必要があります。
マーケティング方法を検討して、他事務所との差別化を図り、顧客の候補である人たちや企業に知ってもらいましょう。税理士としてどれほど知識や経験が豊富でも、マーケティングができていなければ、案件を受注するのは難しいのです。
しかし、多くの税理士は会計や税法についての専門家であり、マーケティングには疎い方が多いです
それもそのはず、税理士試験ではマーケティングについて詳しく学ぶことはありません。
ここでは開業後の税理士が考慮すべきマーケティングの戦略と手法について詳しく解説します。これらの施策を適切に活用することで、新規顧客の獲得、既存顧客との関係の強化、そしてビジネスの拡大を実現していきましょう。
開業税理士が行うマーケティングとは?
マーケティングというと、市場に対して製品を販売する企業やメーカーなどが行うこと思いがちですが、開業税理士もマーケティング戦略を立てる必要があります。事務所に合ったターゲット、提供するサービスなどをあらかじめ分析しておくことで、売り込むべき相手がわかりやすくなり、顧客を獲得しやすくなるのです。
開業税理士が始めに行うべきマーケティング施策は4P分析です。
4P分析がないとビジネスの成功は非常に難しいものになります。
成功している開業税理士で4P分析を知らない方もいるかと思いますが、無意識に実施している場合がほとんどです。4P分析を意識することでより効率よくマーケティングを行うことができます。
4P分析はマーケティング学者のエドモンド・ジェローム・マッカーシー氏が提唱したもので、Product(製品・サービス)、Price(価格)、Place(販売場所・提供方法)、Promotion(販促活動)について分析を行ってマーケティング戦略を立てる手法で、それぞれの頭文字を取って「4P分析」と呼ばれています。
マーケティングは顧客のニーズを理解し、そのニーズを満たすようなサービスを提供することにより、クライアントとの強固な関係を構築する一連の活動を指します。具体的には、自身の専門知識を効果的に市場に訴求し、競争力のある価格設定、アクセス可能な場所でのサービス提供、そして適切なプロモーションを行うことです。
税理士が開業しても、製品・価格・場所・販促が定まっていないとビジネスは成り立ちません。
どのような商品かわからず、価格もわからない、売り場もわからない、販売促進もされていない、となると顧客にその商品を買いたいと思わせる以前に、サービスを認知させることも難しいでしょう。
これらの要素はマーケティングの4Pと呼ばれ、
・製品(Product)
・価格(Price)
・場所(Place)
・プロモーション(Promotion)
の4つの頭文字Pです。プロモーションとは販促(販売促進活動)の事です。
開業税理士のマーケティング戦略の基本は4P分析
税理士が、なんとなく開業して、なんとなく事務所を運営して成功する確率は非常に低いです。
せっかく開業したにもかかわらず、効率的な施策も行わずに廃業してしまっては本末転倒です。マーケティング戦略の基本である4P分析を理解して、顧客が魅力的だと感じる訴求を行いましょう。
以下で4Pのそれぞれの項目について詳しく解説していきます。
Product
「Product」=製品は、4P分析の中でも特に重要な要素で、税理士が提供するサービスそのものを指します。これがなければ、ビジネスは存在しえません。
どのような商品を提供するかを考える前に、まずはニーズを調べなくてはなりません。ターゲットにしている層が何を求めているのか、需要の高いものを検証しつつ、そのなかから自身の得意なものや強みを活かせる商品やサービスを作り出します。
また、税理士という仕事は「モノ」ではなく「サービス」を提供する仕事のため、その対価を明確に請求しづらいことがあります。金銭的なトラブル防止や効率的な売り上げの確保のために、クラウド会計ソフトや融資相談など、税務以外とのパッケージ商品を提案していく方法も良いでしょう。
すべてを行うことも可能ですが、開業してすぐに幅広いサービスを行うことはお勧めしません。
自身のサービスがどの分野に特化していて、競合他社よりも満足度の高いサービスが提供できるのかを明確にしましょう。
コストパフォーマンスや対応速度、アフターサービスなどの付加価値で魅力的なProductを目指しましょう。
「製品」は、クライアントの課題を解決するための具体的な解決策であり、4P分析の中で最もクライアントが求めるものです。魅力的な「製品」でなければ、他の「価格」「場所」「プロモーション」を整えてもクライアントのニーズは満たせません。
また、製品は競合他社との差別化を図るための要素であり、税理士の専門性と信頼性を示す手段です。提供する製品を常に改善し、顧客のニーズを満たせるように調整することがマーケティング戦略の基盤となります。
Price
「Price」=価格は、税理士が提供するサービスの対価です。価格設定もビジネス戦略において重要です。価格もクライアントの満足度、利益率、市場競争力などに直接影響を与えます。
サービスの「価格」は、税務会計、経営コンサルティング、監査、法的アドバイスなどの各サービスの価値を適切に反映した価格設定が求められます。
価格を決める場合は、
・しっかりと利益が出る価格か
・高い需要があり提供することで顧客に満足してもらえるか
・競合の事務所が同じようなサービスを提供している場合の価格帯
これら3点に注意して価格を設定していくようにしましょう。
価格は税理士の専門性と信頼性を反映するものであり、ブランド力が無い状態での高すぎる価格設定はもちろん、不自然に低すぎる価格設定もサービス品質を疑われてしまいます。
クライアントが感じる「サービスの対価」に整合性を持たせることを考慮して設定しましょう。
価格は固定ではなく、市場の動向、競合状況、クライアントの反応などに応じて柔軟に見直すことも必要です。売れ筋の価格設定も常に変動しているものと理解して、競合調査を絶えず行い、積極的に市場の価格変動を感知するようにしましょう。
Place
「Place」=場所は、税理士が提供するサービスがどこで提供されるのかということを指します。つまり製品の売り場です。物理的な立地、WEB上のプレゼンテーションなども含みます。
税理士にとって立地はとても重要で、アクセスが良く、クライアントにとって便利な場所にあることが求められます。
対面で相談したいなどのニーズに対応するためにも、公共の交通機関を使ってきやすい場所か、駐車スペースはあるか、企業の事務所があるエリアから離れすぎていないかなどを検討する必要があります。来的に営業範囲を広げ、支店を設ける場合なども考えて立地を決めておくと良いでしょう。
デジタル化が進んだ現代では、物理的な場所だけでなく、オンライン上の「Place」も重要になってきています。
開業税理士がWEBでの展開を疎かにすると、顧客の幅を狭めてしまうことになります。
ウェブサイトやソーシャルメディア、メールやオンライン会議ツールなどを通じてサービスを提供することでクライアント広範囲のクライアントにサービスを提供できるようにしましょう。
近年ではWEB上のプラットフォームは、自身の専門性を積極的に公開できる場になりました。質の高いコンテンツを提供し、クライアントの問題解決を支援することで、自身の価値を証明することができます。
物理的な場所だけでなく、WEBサイトやSNSも最大限に活用してサービスの提供方法を工夫することが求められます。税理士のブランドを強化し、競争優位性を確立する上で重要となります。
Promotion
「Promotion」=プロモーションは、税理士が提供するサービスをどのように認知してもらうかを指します。
開業税理士が行う「プロモーション」は、税務会計、経営コンサルティング、監査、法的アドバイスなど、提供するサービスを対象とした宣伝です。
プロモーションは税理士としての専門性や信頼性を示し、サービスの価値やメリット、独自性や差別化を伝えるための重要な手段です。
税理士のプロモーション活動は様々です。WEBサイトやSNSを通じたWEBマーケティング、セミナーや研修の開催、DMやチラシなど多岐にわたります。
多岐にわたるプロモーション活動にも、それぞれでターゲット層や、マーケティング手法が異なります。プロモーション活動ごとのマーケティング手法や、ターゲットのニーズを理解して効果的に情報を提供することが重要です。
開業税理士にとっては、不特定多数に対する宣伝よりも、より顧客になる可能性が高い層へアプローチできる方法として、ホームページやブログで、自分が得意とする分野の発信を行うと、事務所のブランディングにもつながり、より効果が高くなります。
単純に多くのプロモーション活動を行うだけでは時間と費用を浪費してしまうだけです。
例えばWEBサイトは幅広い年齢層に向けて発信することができますが、WEBサイトを作成しただけでは顧客の目に留まりません。検索結果上位に表示させるためにSEOという技術が必要です。
例えばSNSではInstagramは画像との相性が良く、X(旧:Twitter)は短文でリアルタイム、Facebookは企業色が強いですが日本でのシェア率は高くない、など。
プロモーション活動の効果を最大化するためには、それらの媒体に沿ったマーケティング手法を学ぶ必要があります。また、プロモーション活動の成果を定期的に評価し、戦略を調整し続けることも重要です。
税理士が開業後に優先すべきマーケティングはコレ!
税理士が開業したばかりの段階では、以下のようなマーケティング戦略の優先順位を考えると良いでしょう。
これからの時代にインターネットは不可欠です。特に、自分が得意とする分野を明確に打ち出したホームページなどは、税務全般という曖昧な業務範囲で依頼を受けるよりも効率が良く、他事務所との差別化もしやすくなり、集客に効果的です。
ただし、あまりにも分野を絞りすぎてしまうと、今後取り組もうと考えている分野の受注がしづらくなる可能性もあるため、注意が必要です。さらに、検索数を増やすためにキーワードやSEO対策にも気を配らなくてはなりません。
- ブランド・イメージの構築: 最初に取り組むべきは、事務所のブランドイメージの構築です。開業した事務所が何を専門とするのか、どのような価値を提供するのか、どのようなクライアントに対してサービスを提供するのかを明確にすることが重要です。後で制作するウェブサイト、SNS、名刺のプロフィールなどに明記するようにしましょう。
- ウェブサイトとSEO: 税理士としてのサービスを広く知らせるためには、ウェブサイトが必要です。また、検索エンジン最適化(SEO)に取り組むことも重要です。現代でウェブサイトを持っていない税理士事務所は珍しいほどで、ウェブ上の名刺としても十分に活躍するので作成しておきましょう。
- 人脈: 人脈の広さは、開業して事務所を軌道に乗せるうえで大きな助けになります。異業種交流会やセミナーなどを通じて、できるかぎり交流関係を広げていくようにしましょう。紹介から顧問先を増やしていければ、事務所経営の安定につながります。人脈の構築は長い道のりですが、新規の顧客を得るために有効な手段です。顧客やビジネスパートナーの紹介にも繋がります。アックスコンサルティングが主催する交流会やセミナーに積極的に参加することで人脈を広げることができますので、是非ともご参加ください。
- SNSマーケティング: SNSは拡散力が非常に高く、コストをかけずに多くの人に認知してもらうことができます。SNSを利用して知識や技術、専門性やサービスをアピールしましょう。税理士と相性が良いのはFacebookとX(旧:Twitter)です。税理士としてのマーケティングにTikTokやInstagramを使用するのは顧客層と合致しづらいかもしれません。各SNSの特徴とそれぞれのSNSマーケティングについて学ぶと良いでしょう。
- 顧客満足度と口コミ: クライアントが満足することで口コミやレビューをもらえます。口コミやレビューは主にウェブサイト上で大きな力を発揮します。外食をするときにお店の評価やレビューを見ることがあると思います。それらは税理士業でも同じです。検索したときに評価の良い税理士事務所は新規顧客を獲得しやすくなります。積極的にクライアントから良い評価をもらえるよう、サービスに尽力しましょう。
間違ったマーケティングは廃業の原因
間違ったマーケティング戦略は、ビジネスの成功を大きく阻害する要因となります。特に開業したばかりの税理士の場合、限られたリソースの中で最大の効果を引き出すための適切なマーケティング戦略は、そのビジネスの生存に直接関わります。
間違ったマーケティングに時間と資源を投入すればするほど、ビジネスは廃業へと向かう可能性が高まります。
だからこそ、適切なマーケティング戦略を練り、それを実行することが重要なのです。
開業税理士が ”やってはいけない” マーケティングの例
間違ったマーケティング戦略は、ビジネスの成功を危うくする可能性があります。整合性のないマーケティングに時間と費用を浪費しても逆に顧客が離れていくことになります。以下の点に注意しましょう。
- 顧客のニーズを無視: マーケティングの基本は顧客のニーズを理解して応えることです。サービスを強調して押し売りするようなマーケティング逆効果です。単発の確定申告をお願いしたい個人事業主の顧客に税務顧問を押し売りしても成果には繋がる確率は低いでしょう。余計な詮索や、求めてもいないサービスを紹介されると印象を悪くしてしまいます。
- 適切なターゲット市場の欠如: 幅広い人を対象にマーケティング活動を行うと、時間も資金も無駄が多くなります。開業税理士の初期WEBマーケティングでは、数か月間で数万~数十万を使いますが、適切なターゲット市場に限定しないと事務所の得意分野にマッチした特定の顧客群に対するメッセージの効果が薄れる可能性があります。
- 品質の低いコンテンツ: デジタルマーケティングでもコンテンツの品質は重要です。不確かな情報や専門性や信頼性を欠いた情報をウェブサイトで公開することは大きなリスクです。顧客からの信用を失い、同業者からの印象も悪くなってしまいます。
- 分析の欠如: マーケティングの成功を評価するためには適切な分析が必要です。どのような客層にアピールした結果どうなったのか、どう改善すべきなのか。PDCAを意識して有効な施策を考えることが重要です。なんとなくやってみても成功は遠く、改善を重ねない限りは時間と資金を無駄にしてしまいます。
- 一貫性のなさ: サービス内容やブランド性に一貫性がないと、顧客は混乱してしまいます。コストパフォーマンスを売りにしていたブランドが、急に高級志向に切り替わると顧客が離れていくように、一貫性がないと既存顧客まで信頼性が損なわれてしまいます。媒体にかかわらず、事務所の方針を決めた時からあらゆる場所で一貫していることが望ましいです。
まとめ
開業した税理士が安定した事務所を運営するためには、多くの案件を獲得し、集客に努力することが重要です。そのため、他の事務所と差別化し、自分たちのサービスを理解しやすくするマーケティングを意識しましょう。
4P分析(製品・サービス、価格、提供方法、販促活動)を用いて、自身のサービスを効果的に市場に提示し、競争力のある価格設定、アクセス可能な場所でのサービス提供、適切なプロモーションを行うことが重要です。
開業税理士にとって重要なマーケティング戦略としては、事務所のブランドイメージの明確化、ウェブサイトとSEOの活用、人脈の拡大、SNSの活用、そして顧客からのレビュー獲得が挙げられます。特にブランドイメージの明確化は、事務所が何を専門とするのか、どのような価値を提供するのかを明確にすることが重要です。
マーケティングが不適切であれば、ビジネスが廃業に向かう可能性もあるため、注意が必要です。特に限られたリソースの中で最大の効果を引き出すための適切なマーケティングは、ビジネスの生存に直接関わります。
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