「開業しなければよかった…」失敗した税理士の後悔事例3選

最終更新日 2024年8月23日

「開業しなければよかった...」失敗した税理士の後悔事例3選

税理士は難関と言われる国家資格のため、資格を得ることで「これで安泰」「いくらでも仕事はある」と思ってしまうかもしれません。しかし、他の職種同様、開業しただけで仕事が来るわけはありません。

計画も準備もせずに失敗してしまう税理士の方も多いです。

 

失敗しないためにも、計画や準備を怠らずに、案件の受注や顧問契約などの顧客開拓をしながら事務所を軌道に乗せたうえで、営業活動や情報収集、スキルアップなど、税務以外の業務も継続して行っていく必要があるのです。

ここでは税理士が開業後に起こった失敗談や後悔、さまざまな課題に直面してしまった実例をご紹介していきます。トラブルや課題、リスクを知っておくことで、失敗を回避したり、後悔しない心構え、対処方法を検討しておく、などできるはずです。

事例1・Mさんのケース:営業力不足が招いた危機

失敗した税理士の後悔事例①営業力不足が招いた危機

税理士事務所で上司や同僚、クライアントからの信頼も厚く、優秀な職員として活躍していたMさん。その豊富な知識と経験を活かして独立しました。そして開業からわずか半年後、本人と周囲が思っていない事態に陥ってしまったのです。

税務に関しては完璧な知識と経験を持つMさんですが、半年間全く営業をしなかったために顧客はほぼゼロ。知人の紹介などで単発の依頼は数回ありましたが、顧問契約には至らず、事務所は運営費にも困るようになりました。結果、資金不足により、わずか半年で廃業寸前まで追い込まれてしまったのです。

失敗・後悔の原因

Mさんはこれまで優秀な税理士として勤務していましたが、自身の事務所を持ち、経営者として営業活動もするという意識に欠けていたようです。もちろん営業経験もありません。

真摯な姿勢で待っていれば、自然と顧客は集まるものだと思ってしまっていたのが、一番の原因です。

さらに周囲には多くの競合となる税理士事務所があり、そのなかで選んでもらえるような独自性もなかったのです。

対処

事務所の現状に危機感を覚えたMさんは、ホームページやチラシの制作、紹介を依頼するなど慌てて営業を行い、なんとか少しずつ顧客が来るようになりました。その結果廃業は免れましたが、事務所が安定するまでには通常よりもかなり時間がかかってしまいました。ホームページやチラシ、WEB広告などの施策は開業して早い段階から勧められれるようにしておきましょう。即日来店ではなく、結果が出るまでに時間がかかるものです。営業活動をもっと早くやっておけばよかったと後悔しないようにしましょう。

事例2・価格競争に飲み込まれた危機

失敗した税理士の後悔事例②価格競争

税理士としての知識や経験に加えて営業力も身に付け、独立前から綿密な準備をしていたTさん。そのため独立後も順調に集客ができていました。にもかかわらず経営は悪化して、事務所は資金不足に陥り、倒産寸前という事態になってしまいました。

Tさんは独立後、安定した受注と価格競争に勝つため、適正価格よりもかなり低い金額で仕事を受けてしまっていました。もちろん、開業直後はこういった営業方法もありますが、長く続けてしまうと、金額を戻すのは難しくなります。適正価格に戻すと同時に、顧客が離れていってしまうと考え、安い仕事をやみくもに引き受けるという負のスパイラルにはまってしまうのです。結果、事務所の経営は徐々に悪化。どんどん忙しくなるのに利益が出ないという状況に、ついにTさんは体調を崩してしまいした。

失敗・後悔の原因

原因はTさんが戦略として考えた低価格での受注にあります。

一人で税務をこなしていたため、依頼を受ければ受けるほど忙しくなり、それなのに利益は全くあがらないという悪循環を招いてしまったのです。さらに、安さを売りにした、その先の策も講じていませんでした。

対処

体調を崩してしまったTさんは業務をこなすことも難しくなり、事務所は廃業することになってしまい、大きな後悔を残す結果となってしまいました。価格競争で競わなくても選んでもらえるような独自性を持つなど、失敗しない為にはもう少し検討の余地があったかもしれません。また、最初は低価格で始めたとしても、徐々に報酬金額を適正な金額へ戻していけるよう、サービスや料金体系を開業前に考えていれば、もう少しスムーズに軌道修正できたかもしれません。

事例3・私生活の変化

失敗した税理士の後悔事例③私生活の変化

独立すると、それまでよりもさらに仕事とプライベートのオンオフが曖昧になる傾向があります。私生活が仕事に大きく影響することもあるでしょう。独立して約3年、顧客も順調に増え、特に大きなトラブルもなく事務所を経営してきたKさんですが、ある日一人暮らしの実家のお母さんが突然病に倒れ、Kさんが世話をすることになりました。

もちろん、介護サービスなど第三者の協力も仰ぎましたが、独身で兄弟のいないKさんが基本的にはすべての面倒をみることになり、税理士の仕事にも影響がでるようになってきてしまいました。

失敗・後悔の原因

分担する相手がいない介護を続けた結果、身体的にも精神的にも徐々に疲弊してしまったKさん。

年齢的にも若い頃のような体力はなく、税務以外に営業や事務所の雑務をこなさなくてはならない開業税理士を続けるのは難しいと考えるようになりました。

対処

新規の案件を受けることも難しくなり、悩んだ末に事務所を整理し、別の税理士事務所へ転職することを決意したKさん。このケースはあらかじめ想定することが難しい事態ですが、独立する際にはそうしたこともあり得ると考えて、できる限りの対処方法を検討しておきましょう。

税理士が開業して後悔しないために対策すべきこと

税理士が開業して後悔しないために対策すべきこと

開業後に後悔する理由は、先にご紹介したもの以外にもさまざまな要因があるでしょう。もちろん、すべてを回避することは難しいでしょうが、事前の準備や対策によって、失敗を軽くしたり、解決しやすくしたりすることは可能です。そのためには開業前から綿密な経営計画を準備しておくことが有効となります。

集客の知識や営業スキルを身に付けておく

独立を検討し始めたら、まずは集客の方法や営業スキルについて学んでおきましょう。所属していく事務所でどんなにスキルや経験を積んでいたとしても、今のクライアントを引き抜くことはできません。ゼロから実力を知ってもらうには、税務のスキルだけではなく、時代や自身の事務所に合った集客方法や営業スキルを身に付けなくはならないのです。

また、周囲の友人や知人には少しずつその話をしておき、正式に独立が決まった時点で電話やメール、はがきなどで挨拶をしておくべきです。少しでもネットワークを増やし、紹介の可能性を高めておきましょう。さらに、同じ士業や異業種の経営者が集まるようなセミナー、交流会などには積極的に参加し、名刺交換などを行っておくと、今後の活動や顧客獲得にも有効です。常に事務所や自身が得意とする案件などを周囲に伝えるようにしましょう。

経験値を高めておく

独立開業前の経験は、開業後の大きな武器になります。少なくとも2~3年は税理士事務所などで経験を積むようにしましょう。勤務時の顧客を引き継いで独立することは難しいですが、経営のノウハウや営業方法、人脈づくりにも役立ちます。

余裕のある開業資金

開業してすぐに軌道に乗る事務所はほとんどないでしょう。受注がなくても、事務所の家賃や経費、人件費などはかかるため、独立当初は資金がないと事務所の維持に悩むことになります。それを前提に考え、ある程度安定するまでの資金を用意しておくようにすると安心です。

ホームページ開設

今の時代、ホームページの開設は必須。新規顧客の獲得時に役立つことはもちろん、協働できる事務所を探している他の士業、新たな顧問先を探す企業などネットで検索してから問い合わせがくることも多いのです。そのためホームページには事務所の特徴や自身の経歴、得意とする分野など、できるだけ事務所の詳細がわかる内容にしておくことが大切です。

顧問料の設定

顧問料は初期の設定価格が大切です。高すぎれば受注が難しくなりますが、新規顧客を得るために安くしすぎると、正当な価格に戻すのが難しくなります。そうすると案件数を増やさないと経営が厳しくなるため、一人で抱えられないという悪循環を招く可能性があります。開業前に売り上げの目標やサービス内容の設定など、ある程度の資金計画を立て、顧問料や報酬の金額を決めておきましょう。

事務所内のコミュニケーション

開業後に従業員を採用する場合、条件ももちろん大切ですが事務所内の雰囲気がよくなるように心がけましょう。まずは質のよいコミュニケーションを目指していくのがおすすめです。事務所の雰囲気やコミュニケーションは、業務を左右し、人材育成にもつながります。

知っておきたい―開業後に法人化してから後悔する7つのこと

税理士が開業後法人化してから後悔する7つのこと

ここからは、個人の税理士事務所から法人化する場合に気を付けるべきことをお伝えしていきます。独立開業した税理士事務所や会計事務所は基本的に個人事業主が多く、税理士一人でほとんどすべての業務をこなしています。対して税理士法人は、2人以上の税理士が在籍し、企業として運営していきます。

事業の拡大や税金対策などで法人化を目指す人は多いのですが、開業時同様に、法人化のメリット・デメリットを把握していないと、後々後悔することも多いでしょう。

1.業務

法人化するとほとんどの場合、業務が複雑になりがちです。法律的な問題はもちろん、人や業務の幅が広がることで経理や社会保険、登記や株主総会なども関係してきます。開業時には税務に加えて、開業に伴って営業活動や庶務をこなす必要がありましたが、さらに多くの業務が発生し、一人でこなすには負担が大きいでしょう。

業務を分散するために従業員を雇うという方法もありますが、もちろん給与などのコストがかかるため、安易に行っては行けません。そして新たに人を入れれば教育も必要になるため、簡単に業務が減るというわけではないということを覚えておきましょう。

2.方針

事務所を法人化したら、「自分もあくまで従業員の一人」という意識が必要になります。特に数人で立ち上げた場合や出資者がいる場合は、なおのことです。個人事業主である税理士事務所と比べると、自由度も低くなる可能性が高いです。

特に経営方針については、それまでの個人事業主とは異なり、自分だけで方向性を決めることはできません。経営に関わる人たちの意見が合わない場合は、自分が思い描く方向とは違う経営方針で進めなくてはならなかったり、時間と共に互いの考えにズレが生じてしまったりということもあるでしょう。

3.責任

税理士事務所から法人化して税理士法人にすることで、代表としての責任はより強くなります。ある意味、自分一人ではなく、従業員の生活も背負うことになるからです。特に責任感が強い人だとストレスに感じてしまうかもしれません。

「法人化して事業拡大を」と考えるのは自然なことですが、決める前にもう一度、大きな責任を伴うということを考えてから行動に移すべきです

4.トラブル

開業時や法人化の際に「自宅を事務所兼用にした」「法人化を機に事務所用マンションを借りた」などのケースは多いのではないでしょうか。個人事業主ならほとんど問題になりませんが、法人の場合は法務局で法人登記を行うことになります。賃貸・分譲マンションのなかには住居専用で事務所使用や登記を認めていない場合もあります。

よく調べずに借りたマンションで登記をしたら、後日、登記不可の物件だったというトラブルがよくあります。事前の確認が大切です。

5.売上

法人化後の売上は、基本的に会社のものになります。個人事業主のときのように自由に使うことはできず、報酬や賞与として決められた個人の収入のみです。会社のお金を使い込んでしまうのはトラブルの元になり、最悪の場合横領などとみなされてしまうこともあるため、十分に注意しましょう。

6.納税・節税

多くの企業が苦しむのが、納税です。個人事業主は赤字であれば所得税と住民税は免除となりますが、法人は赤字であっても納税義務があります。それが、法人住民税です。法人住民税のうち、均等割については黒字化赤字かに関係なく、資本金や従業員数に応じて課税されるものです。「節税を考えて法人化したのに、それほどメリットがなかった」ということになるかもしれません。

さらに、所得税についても利益によっては個人事業主のままのほうが税率は低い場合もあります。収支の予測や経営計画から、法人化することでどの程度メリットがあるのかを十分検討しましょう。

7.経費

法人化すると個人事業主のころよりもかなり必要経費は多くなるものです。事務所の家賃やオフィス家具、細々とした備品が必要になります。また、従業員が増えた場合は給与などの人件費も多くなります

特に従業員の社会保険料は負担が重く、せっかく節税してもそれ以上にかかってしまうことも多いでしょう。しかし、社会保険への加入は法人の義務になっており、一人法人であっても加入しなくてはなりません。社会保険料は従業員本人と法人で給与の30%を折半して支払います。経費のなかで人件費が多い場合は、かなりの負担になります。

まとめ

時間と労力を使って準備を進めたのに、独立開業を後悔するのはとても残念なことです。社会的な変化や技術の進化で税理士が活躍するための方法も変化してきています。

独立後に開業を後悔しないためにも、開業前の準備や経営計画を綿密に立て、起こり得るトラブルや失敗のケースを事前に学んでおきましょう。そうすれば、いざ問題が起きた時にも冷静に対処できます。成功の方法だけでなく、実際に会った失敗も知って、ぜひ事務所の経営に活かしてください。

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