最終更新日 2023年10月19日
税理士には、「開業税理士」「社員税理士」「所属税理士」と3つの区分があります。資格取得当初は社員税理士や所属税理士として働き、いずれは独立して開業しようと考える人も多いのではないでしょうか。
税理士の開業はキャリアや働き方だけでなく、プライベートを含めた今後を大きく左右する重要な決断です。だからこそ、独立開業の良い点だけでなく、悪い点もしっかりと理解しておかなくてはいけません。
この記事では「開業税理士」について詳しく解説していきます。税理士として開業することのメリット・デメリット、さらに開業に向いている人・向かない人を詳しく解説していきます。
税理士が開業するメリットは?
税理士が事務所を開業し独立することで、大きく3つのメリットが考えられます。
1.ライフプランに合った働き方が可能
2.収入アップが期待できる
3.生涯現役で働ける
【ライフプランに合った働き方が可能】
開業税理士は働き方を自分自身で決めることができます。事務所の場所や勤務日数、就業時間はもちろん、子育てや介護など家庭の事情に合わせた働き方も可能。自由度の高さは社員税理士や所属税理士よりもかなり高くなるでしょう。
【収入アップが期待できる】
税理士が独立開業する大きなメリットの一つが、収入面です。受注案件の増加が自身の収入に直結するため、営業力や仕事内容次第で収入を増やすことができます。もちろん社員税理士や所属税理士でも昇給は可能ですが、開業税理士の増加とは比べられないでしょう。人脈や得意分野を活かして顧客獲得に取り組めば、大きく収入アップすることが可能になります。
開業税理士と所属税理士の年収を比較して解説した記事も参考にどうぞ。
【生涯現役で働ける】
自分で事務所を開設する開業税理士には定年退職がありません。何歳まで仕事を続けるのか、どういうペースで働くのか、すべて自分で決めることができます。特に税理士という職業は体力よりも、スキルやそれまでの経験が活かせる仕事。そのため、年齢が上がるほど専門家としての需要が高まり、顧客からの信頼も得やすくなります。
80代の税理士も非常に多くいます。全体の10.4%以上が80代の税理士ですので、3400人以上です。
他で80代まで働ける職業はなかなか見つからないでしょう。
開業税理士の年齢 | |
年代 | パーセント |
20代の税理士 | 0.6% |
30代の税理士 | 10.3% |
40代の税理士 | 17.1% |
50代の税理士 | 17.8% |
60代の税理士 | 30.1% |
70代の税理士 | 13.3% |
80代の税理士 | 10.4% |
開業税理士と年齢の関係については下記をご参考にください。
その他のメリット
上記以外にも、開業税理士には多くのメリットがあります。
●仕事内容や相手を選べる
開業税理士は仕事内容やクライアントを自分で選ぶことができるため、得意分野や今後伸ばしたい種類の仕事、興味のあるクライアントなど、自分が受けたい仕事を優先して手掛けることができます。自ら仕事を選ぶことでストレスも少なくなるでしょう。これに対し、社員税理士や所属税理士は上司や経営者の指示に従うことが求められるため、ストレスを感じる場合もあります。
●従業員を雇い業務分散
開業後に従業員を雇うことで、業務を分散させ効率化を図ることができます。営業活動や事務所内の雑務など、税理士として行う専門的な業務以外を任せることができれば、受注できる案件も増やしていくことが可能です。
●専門知識を活かして税務顧問以外の業務にも取り組める
開業税理士としての知識を活かして、顧問以外の仕事をすることもできるようになります。講演活動や書籍の執筆などに取り組めば事務所のブランディングにもなり、人脈形成にも大変有効です。
株式会社アックスコンサルティングでは、これまで1,100人以上の士業の先生が参加した共同出版や、他士業の先生とのネットワークが構築できる士業交流会などを企画しています。
共同出版
士業交流会
税理士が開業するデメリットは?
開業独立には多くのメリットがあることをご紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。それもしっかりと理解しておくことが、成功のカギとなるはずです。
働き方のデメリット
開業すると就業時間や休みを自分で決めるため、どうしても仕事とプライベートの切り替えがあいまいになりがちです。
顧客や収入の確保のために、つい長時間労働をしてしまう人も多いのではないでしょうか。あまりにも仕事を詰め込みすぎてしまうと、健康に悪影響が出てしまうこともあるため、適度に休みが取れるよう、スケジュール管理していく必要があります。
収入のデメリット
給与が保障されている社員税理士や所属税理士と違います。
開業税理士は業務が収入に直結するため、受注が上手くいかない場合は収入が大きく減少することも考えられますので、デメリットとなります。
また、毎月の事務所収入が平均化されておらず増減があるとういうケースも多いため、月々のキャッシュフローに注意し、定期的な収入を確保するなどして、できるだけ安定するように計画しなくてはなりません。
仕事内容のデメリット
開業後は通常の税理士業務以外に集客のための営業活動や事務所運営のための雑務など、多くの業務もこなしていく必要があります。
具体的には税務顧問など定期的な収入を見込めるクライアントがいない場合は、軌道に乗るまで集客に注力していく必要があるでしょう。また、収入のために本来なら受けたくないと思う仕事を受注しなくてはならない場合も出てくるかもしれません。
従業員を雇うデメリット
従業員を雇った場合、当然のことながら事務所の収入に関わらず毎月給与を支払う必要があります。
また、経営が上手くいかず資金的に苦しい状況であっても、簡単に解雇することはできません。人を雇う時はそういった点もよく考慮してから採用するようにしましょう。
廃業のデメリット
開業後に事務所経営が軌道に乗らなければ、事務所を閉めて廃業しなくてはならなくなる可能性もあります。
しかし、一度独立して事務所を開設したり、設備を整えたりした後では、社員税理士や所属税理士に戻りたいと思っても、なかなか難しいでしょう。だからこそ、開業時の雇用や設備投資には十分注意し、事務所にある程度の余力を蓄えるようにしておくことが大切です。
開業税理士に向いている人
専門的な知識が必要になる税理士には、ある程度の適性があります。ここでは税理士に向いている人のタイプをいくつかご紹介していきます。
1.地道な作業をコツコツと続けられる
税理士は難関と言われる試験のため、資格取得前から地道な努力が必要な資格です。さらに税理士としての実務では企業の経営を左右する緻密な業務が多く、常に税に関わる知見を求められます。もちろん、毎年のように変更がある税制についてもチェックしておかなくてはなりません。
2.コミュニケーションスキル
顧問税理士としてクライアントの悩みや課題解決に向き合うためには、優れたコミュニケーション能力が必要です。税金に関することはもちろん、会社経営全般の相談ができる相手になってこそ、信頼できる顧問税理士としてクライアントから頼りにされる存在になるのです。
3.会社経営や経営支援に興味がある
企業の決算業務は税理士にとって重要な仕事の一つ。決算業務は会社経営に直結し、その会社の財務状況が判断できる作業です。経営的なアドバイスや支援を的確にするためにも、税理士本人が企業経営に興味を持っていることは重要なポイントになるでしょう。
4.常識やモラルを守り、人道的な行いができる
現代の企業にはコンプライアンスやガバナンスがより一層求められています。そしてそれは税理士も同じ。特に税務に関わるプロとして、正しい倫理観を持ち、悪事に加担したり巻き込まれることがないような姿勢・行いを心掛けなくてはなりません。
5.向上心があり、常に新たな学びを求めている
毎年のように行われる税制改正や社会的な変化に対応しなくてはならないのが、税理士の仕事です。そのため、資格取得して開業すれば学びは終わり、と思っているようでは、開業税理士として成功するのが難しくなります。情報に対して常にアンテナを張り、新たなことを学ぼうとする人が税理士に向いているでしょう。
開業税理士に向いていない人
1.数字を扱うのが苦手
税理士は数字を扱う業務がメイン。細かな業務が多く、正確さも必要になるので、数字を扱うことが苦手という人や大雑把なタイプの人には向かない職業かもしれません。
2.意思疎通を図るのが苦手
数字と同様に税理士の業務で必要になるのが、人や企業とのコミュニケーションです。顧客が抱える悩みや課題解決、さらに税務署や金融機関との交渉など、コミュニケーション力は税理士にとってなくてはならないものと言えるでしょう。
まとめ
開業税理士を目指すなら、メリットだけを見るのではなく、デメリットも理解しておかなくてはなりません。事前にメリット・デメリットの両面を理解しておけば、開業後のリスクや起こりがちなトラブルを回避しやすくなるはずです。開業した場合の良い面・悪い面の両方を見ておき、開業税理士についての理解をさらに高めておきましょう。
アックスコンサルティングでは税理士の開業をサポートしています
1988年の創業以来一貫して、士業事務所とその顧問先である企業、資産家の、ビジネスの成功をコンサルティングでサポートしてまいりました。業界屈指の圧倒的な経験と実績を持つアックスコンサルティングが、税理士の皆様を開業からサポートさせていただきます。
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