税理士の独占業務とは?

最終更新日 2024年8月23日

税理士だけが許されている業務。それが、税理士の独占業務です。
これは税理士法によって定められたもので、
税理士法第52条によって「税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法の無償独占業務である」と規定されています。

この記事では、これら税理士しかできない独占業務の種類と詳しい内容、独占が許されている理由などのほか、それら以外に今後取り組むべき税理士に求められる業務をご紹介していきます。

税理士しかできない「3つの独占業務」

税務に関する専門家であり、国家資格を有するのが税理士です。納税者本人に代わって税金の書類を作成したり、それらを申告したり、顧客の税務の相談に乗るのが主な業務内容ですが、それ以外にも幅広い業務をこなします。

そうしたなかで、税理士しか行えない独占業務は以下の3つです。

税理士の独占業務①:税務書類の作成             

税金を申告する際、税務署に提出する書類が税務書類です。
確定申告
決算書相続税の申告書など、さまざまな税務書類があり、これらを納税者本人に代わって作成するのが、税理士の独占業務です。

<主な税務書類>
・確定申告用の税務書類
・青色申告用の税務書類
・相続税申告書
・個人事業主及び法人の月次・年次決算書(損益計算書・貸借対照表など)
・源泉所得納付書
・異動届等各種届出書

税理士の独占業務②:税務代理

税務代理も独占業務の一つです。
具体的には税金の申告・納付や、税務署の調査や処分に対しての主張・陳述などを本人に代わって税理士が行います。近年はインターネット経由で国税の納付を行うe-Tax(イータックス)も使われていますが、電子申告であっても税理士以外が代行するのは税理士法違反になるため、注意が必要です。

税理士の独占業務③:税務相談

企業や個人からの納税に関する相談も税理士の独占業務です。
納税金額の計算手続き方法、節税対策などへの対応はもちろん、税務調査の立ち合いなども行います。相談という内容から、安易に無資格者が行ってしまうということもあるようですが、無償であっても税務相談を税理士以外が行うことは違法となります。

今後求められる独占業務以外の仕事

「税務書類の作成」「税務の代理」「税務相談」という税理士の独占業務をご紹介しましたが、これ以外にも顧問先からは多くの依頼があります。会計業務と税務は深く関連しているため、記帳代行データの入力など、会計業務と併せて請け負うものも多かったのではないでしょうか。

さらに近年では、これまでの税務に加えて、新たな役割も求められるようになってきました。
経営のアドバイスを行うコンサルタントとしての業務やM&Aへの対応などです。

こうしてさまざまな業務が必要とされるようになったのには、中小企業数が減少しているなかで登録税理数が増えていること、クラウド会計などのテクノロジーの発展、社会的な変化など、さまざまな背景があります。いずれにせよ、他の事務所との差別化を図っていく必要があるといえるでしょう。独占業務以外で求められるのは、以下のような業務です。

税理士の独占業務以外の仕事①:記帳代行

記帳代行はこれまでも税理士が行うことの多い作業でした。企業に代わって収入や支出を仕分けし、帳簿を作成します。この作業は税理士が行う決算申告にも大きく関わるため、併せて依頼されることが多かったのですが、会計ソフトが進化しクラウドサービスなども出てきたため、今後は記帳代行というサービスも変化していくと考えられます。

税理士の独占業務以外の仕事②:コンサルティング業務

税務をこなすだけでなく、経営全般についてのアドバイスを行うコンサルティング業務が求められるようになります。特に、決算申告をおこなう税理士はお金のスペシャリストと思われるため、予算や決算書を踏まえた専門的な意見を期待されるでしょう。

税理士の独占業務以外の仕事③:金融機関・保険会社との折衝

金融機関や保険会社との均衡のような、金銭に関わる事柄をスムーズに処理したり、トラブルを事前に回避したりすることも期待されます。毎年さまざまな補助金や助成金の申請が行われており、内容や申請方法も都度変わります。それらを効果的に使うため、知識を持つ税理士のアドバイスが必要とされているのです。また、金融機関から受ける融資などについての相談や実際の折衝役としての役割も期待されるでしょう。特に融資や出資を受けるには会社の決算書含めてさまざまな書類が必須になるため、税理士の業務として同時に作成することになるでしょう。

税理士の独占業務以外の仕事④:起業支援

起業支援といってもいろいろあります。設立や各種申請のサポートはもちろん、設立時に検討しなくてはならない資本金や事業目的、決算期などについても企業支援として相談を受けます。さらに、事業計画や開業資金の調達、経理事務などについての支援も行います。

税理士の独占業務以外の仕事⑤:組織再編税務

組織再編時の税務処理はかつては大企業が行うものでしたが、経営者の高齢化による跡継ぎ問題などから、最近では中小企業もM&Aに取り組むようになってきました。会社の価値を適正に見極められる税理士にM&Aを相談するケースが増えているのです。

税理士の独占業務が認められている理由

税理士法で定められた独占業務は、報酬の有無に関わらず税理士以外は行うことができません。これは、国費・公費の元となる税金に大きく関わるものだからです。税金の専門家として国家資格に合格した人のみに、その資格が与えられています。

税理士資格を持たない無資格者が独占業務を行った場合は税理士法違反となります。

税理士の独占業務のメリット

企業や個人が税理士に独占業務を依頼するメリットを改めてご紹介します。税理士自らきちんと理解することで、顧問先にもその有効性を伝えられるはずです。

メリット①
高い専門性で、税務関連のトラブルを回避できる。
決算書やその他税務書類は企業にとって非常に重要なものです。これらがしっかりと整備されていることで、税務調査が入った時や融資を受ける際の書類準備なども円滑に行うことができます。

メリット②
時間を効率的に使える。
専門的な作業を任せることで業務の効率化を図ることができるため、企業にとっては大きなメリットになるでしょう。特に確定申告などの繁忙期に業務に支障をきたさないようにすることができます。

メリット③
人件費の削減
会社の規模にも左右されますが、税理士に独占業務を依頼することで、経理など専門の担当者を雇うよりも場合によっては人件費を削減することができます。

税理士の独占業務は儲かる?

独占業務を手掛けていれば売り上げがあがるわけではありません。
登録税理士が増えている今、他の事務所と同じ業務内容をしていても、淘汰されてしまう可能性が高くなります。儲かる事務所になるためには、独占業務だけではなく、より専門性の高いサービスを提供していくこと。自社の得意分野と企業の需要を見極め、他にはないサービスを提供していくようにしましょう。

また、新規顧問先を増やしていくためには事務所の雰囲気や税理士自らのコミュニケーションスキルも重要。そのためには常に新たな情報やネットワークをつくっていくという日々の努力が必要です。

税理士の独占業務を税理士以外が行ったらどうなる?

先述のとおり、独占業務は税理士にだけ許されている行為です。
いくら知識があったとしても、
無資格者が独占業務を行った場合は税理士法違反となり、「3年以下の懲役または200万円以下の罰金」が適用されます。
※報酬の有無は関係なく罰則が適用されます。

まとめ

税金とは、社会保障や福祉、公的サービスに必要不可欠な、国家運営の軸とも言えるものです。そしてその税金のスペシャリストであり、国家資格を持つ税理士という仕事だからこそ、有資格者にしかできない業務が定められています。税務の知識を活かすことで、企業や個人事業主の税務の軽減はもちろん、業務効率化や経費の節約にもつなげることができます。

基本となる独占業務の内容やメリットを改めて確認したうえで、自身の得意分野や専門性を伸ばしていくことが、税理士として成功する鍵になるのではないでしょうか。

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